平成23年は、はや12月となりました。何かと忙しい、師走です。「師」がつく職業は皆忙しいのでしょうか。医師、看護師、鍼灸師、漫才師、手品師、詐欺師など。何か、忙しい気もします。そもそも師とは「接尾語として使う場合、技術、技芸などを表す語につけて、その道の専門家であることを表す」ようです。12月は詐欺師を含む技術者は、総じて、昔から忙しいのでしょう。「士」がつく職業も多くなりました。介護士、栄養士、消防士、弁護士、宇宙飛行士など。士の意味は「特別の資格がある人」だそうです。師と士の違いで12月の忙しさが違うのでしょうか?私は、「師走」とは師や士の方が震災でストレスを受け、不調な方々の助けとなるため、忙しくしていると理解しました。
今年、3月11日、東日本大震災が発生し、震災は、家、家族、友人、仕事など多くのもの奪いました。その上、原発事故では、震災の被害のない所までも仕事や家、友達、学校、家畜、農作物など多くのものを失いました。
心療内科医の海原純子さんは、職業上、震災の復興に際し、アイデンティティーの復興が大事だと話しています。その話を少し紹介します。
80歳を過ぎても元気で漁をしていたその方は、津波で船が流されて、一時は漁を続ける事を断念しました。しかし、自分には海しかないと、仲間から船を買い、再び漁にでたものの、原発事故の影響で仕事ができなくなりました。その方の言葉が忘れられません。「漁師が漁ができないのは最低です。」
国はお金で十分補償すると言いますが、お金でも埋め合わせ出来ないものがあります。それが、アイデンティティーです。アイデンティティーとは人が時や場面を越えて一個の人格として存在し変化が見られない事、つまり、自己同一性です。先ほどの漁師さんは、漁をして、自然とともに生き、社会とつながっていました。漁師は漁をする事で自分らしく生きることが幸せにつながります。農家は田畑で米や野菜、果物を育てて、幸せを感じます。我々は患者さんを治して、幸せを感じています。どんなに大変でも自分のアイデンティティーを持ち自分らしく生きることが幸せにつながります。現在、国は復興準備をしていますが、アイデンティティーに共感した計画はあるのでしょうか?このような時こそ師や士の活躍が期待されます。「師走」、今年の最後を突っ走りましょう。