現在「2人に1人はがんになる」と言われています。「がん」という言葉は身近になっています。そもそも「がん」とは何でしょうか。「がん」は遺伝子の突然変異によって生まれる死なない細胞です。人間の体は37兆個もの細胞からできています。生命維持のために細胞分裂を繰り返していますが、細胞は何回か分裂し、自然に死んでいきます。組織により寿命が違い、腸の細胞は数日で、皮膚の細胞は約30日で入れ替わります。この死んでゆく細胞の代わりに毎日約3千億の細胞が生まれています。気の遠くなるような数です。世界の人口が80億ですから、それぞれに3千億ずつの細胞が毎日生まれると考えるとめまいがしそうです。
新たな細胞を生み出すための細胞分裂では遺伝子の複製(コピー)が行われます。毎日3千億の細胞が複製され生まれてくると思うと、どこかにコピーミスが起こってもおかしくない状況です。このコピーミスが「細胞分裂を繰り返し続ける死なない細胞」を突然変異で生み出すことがあります。これが、がん細胞です。がん細胞は突然変異で発生したがん遺伝子が働き続けるため、細胞が死ぬことが出来なくなっています。一般にコピーミスはコピー機が古くなると起こりやすいため、がんは「遺伝子の老化」と言えます。
実際、健康な人でも毎日がん細胞が発生しています。でも、免疫細胞が異常を感知して、がん細胞を処分してくれています。ただ、免疫細胞をすり抜ける巧妙ながん遺伝子があったり、免疫細胞も老化で元気が無くなったりします。つまり、年齢とともに遺伝子に突然変異が積み重なりがん細胞の発生が増える一方、免疫細胞の働きも衰えます。がんとは老化であり、寿命が延びれば延びるほどがんが増えてきます。このために現在「2人に1人はがんになる」時代になっています。もっと寿命が伸びると、みんながんになる時代が来るかもしれません。
がんは遺伝する病気と考えられがちですが、遺伝はがんの発生要因の5%程度に過ぎないそうです。特定のがんを発生しやすい遺伝子が遺伝する乳がんや卵巣がんもありますが、がん全体の5%で、ほとんどのコピーミスは後天的に生じるそうです。禁煙などの生活習慣の改善で、コピーミスを大きく減らすことは出来ますが、完璧な生活でもがんを防ぎ切ることは出来ません。ただ、がんは早期発見で治療出来る時代になっています。コロナ全盛期は健診される方がとても減少しました。アフターコロナの今年は健診やドック受診をしてみませんか。